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「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













国境を越えた民衆法廷運動へ

裁かれない権力犯罪の根絶に向けて

[2015.7.12]



ヨーロッパでは民衆法廷が盛んに開かれている (写真は2010年・バルセロナ)


権力犯罪について考える


 戦後70年目の年ということで、前回は「国連」について述べた。

 今回は、その国連(=連合国)の手により、1946年にニュルンベルク裁判と東京裁判において創造された「人道に対する罪」や「平和に対する罪」について考えてみたい。

「人道に対する罪」や「平和に対する罪」は、それまでの国際法や国際条約には全く存在しない概念であった。

 そのためこれらの軍事法廷は、法の不遡及原則を否定した「事後法」による裁判として、当時から今日に至るまで批判されてきた。日本やドイツなどの大陸法的な罪刑法定主義の立場からすれば、到底受け入れ難い裁判であったと言える。

 しかしながら、ニュルンベルク裁判および東京裁判は、「法廷による法の創造」を認める英米法に基づく裁判として進行されたものであり、英米法の観点からすれば、正当な裁判として十分成立するのである。

 いずれにせよ結果として、ニュルンベルク裁判では12名に死刑判決が下り、自殺したマルティン・ボルマンを除く11名に絞首刑が執行され、また東京裁判では東条英機をはじめ7名が絞首刑になったという厳粛なる事実がある以上、当該裁判は事実として成立したものとして受け入れる以外にない。

 というよりはむしろ、判例を立法と見做す英米法の観点から、「人道に対する罪」や「平和に対する罪」という新たな国際法が成立した事実こそ有効に利用するべきであろう。

 すなわち、世界の何処かにおいて「人道に対する罪」や「平和に対する罪」に該当する権力犯罪が明らかになった場合には、国際社会はそれら犯罪を過去に遡って徹底的に追及し、当事者達を国際法廷で裁くことを躊躇してはならない。

 これこそが、ニュルンベルク裁判および東京裁判によってもたらされた判例(=立法)の要求であったはずである。


「常任理事国は神聖にして侵すべからず」?

 しかしながら戦後70年間にわたり、国連常任理事国が実行した権力犯罪について、「人道に対する罪」や「平和に対する罪」が適用された例は一切存在しない。

 1990年代、旧ユーゴやルワンダの国際戦犯法廷では、「人道に対する罪」が適用されたが、軍事的にほとんど無力な小国の場合のみ「人道に対する罪」が適用され、常任理事国による虐殺や非人道的行為に関しては罪状が全く問われないのが、現行の国際社会なのである。

 小国の権力犯罪を針小棒大に取り上げて断罪するパフォーマンスによって、大国は自らの権力犯罪の隠蔽に成功している。

 21世紀だけを見ても、米国のイラクにおける民間人虐殺と捕虜虐待、ロシアのチェチェンにおける民間人虐殺、中国のチベットやウイグルにおける民族絶滅(ジェノサイド)政策などは、間違いなく「人道に対する罪」のド真ん中に該当する権力犯罪である。

 しかしながら現実には、それらの当事者が裁かれることは決して無いのである。

 あたかも「国連常任理事国は神聖にして侵すべからず」という「裏・国連憲章」があるかの如くである。常任理事国は国際法に問われない、という特権が実際には存在しているのだ。

 これは前回も述べたとおり、国連の本当の目的が、「1945年の世界秩序の固定化」にあるためである。

 したがって、米国がチェチェン問題でロシアに介入する事は無いし、チベット問題で中国に介入することも無い。その代わり、中国やロシアがイラク問題に介入することも無いのである。

 こうした現実を見れば、米国が日本の為にわざわざ中国と戦うような事は、間違ってもあり得ない事が分かるはずである。


大国に対抗する民衆法廷

 それでは、大国が国際法を守らない時、私達は一体どうすれば良いのだろうか。

 戦争犯罪や人権犯罪を民間で監視し、国家に国際法を守らせる運動として、「民衆法廷」というものがある。

 従来の国際法廷は、当事者がそれぞれ国家を背景にしているために、国益を損ねるような問題を扱うことが出来ないという限界があるが、民衆法廷はそのような制約を受けることなく、純粋に国際法上の観点から判断することができるという特徴がある。

 最初に開かれた民衆法廷は、ベトナム戦争を契機に発足した「ラッセル法廷」であった。

 1966年6月、ベトナム戦争に反対していた英国の哲学者バートランド・ラッセルが「アメリカの良心へのアピール」を発表し、これに賛同した人々を中心に、66年11月、ロンドンで「国際法廷設立会議」が開かれ、ボーヴォワール、ドイッチャー、デディエらの知識人が集まり、ラッセルを名誉裁判長、フランスの哲学者サルトルを裁判長とする法廷が発足した。その後、ストックホルムやコペンハーゲンなど各都市において数回にわたり開かれた法廷の過程で、ベトナム戦争の数多くの問題点が次々と明らかにされ、世界中の反戦運動に多大な影響を及ぼした。

 このように国際的な民衆運動は、大国をも揺るがす力を有している。

 民衆法廷は、国家を主体とする現行の国際秩序に対する問題提起でもある。

 私は長年にわたってチベット問題やウイグル問題に関わってきたこともあり、こうした国際的な民衆法廷運動の必要性を感じている。

 国境を越えた民衆法廷運動は、やがて国連など既成の国際秩序に対抗し得る地球的ネットワークへと発展するものと確信している。






《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

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