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国際社会への「宣戦布告」を発した習近平


党創立百周年記念式典の習演説が意味するもの


[2021.7.13]




習近平の個人独裁確立を誇示した中国共産党創立百周年記念式典
PHOTO(C)共同通信


個人独裁体制の確立を誇示した記念式典


 7月1日、北京において中国共産党創立百周年記念式典が行われた。

 党員7万人が動員された天安門広場で、習近平国家主席は1時間超にわたり演説を行った。

 式典では党幹部が皆スーツ姿の中、習近平だけが人民服を着用し、自らをあたかも毛沢東の再来であるかのように印象付ける演出が行われた。

 また、7万人の参加者が一糸乱れずマスゲームのように動く様子にも、「権力」の性格が表れていた。

 7万人の参加者全員が、同じタイミングで拍手をしたり歌を合唱した事などから、事前に何度も練習を繰り返した上で本番に臨んでいたものと見られる。

 こうした類の大規模集会は、今日では北朝鮮でしか見られない光景である。

 鄧小平時代から江沢民・胡錦涛の代まで続けられた集団指導体制は今や見る影も無く、習近平の個人独裁体制が確立した事を内外にアピールする式典であった。

 すでに共産党最高指導部のメンバーの定年慣例(5年に1度の党大会時に68歳以上なら引退)が廃止された為、習近平は少なくとも2027年まで最高指導者の地位を続けることになる。

 習近平は、自らを毛沢東になぞらえたいのであろうが、毛沢東というよりはむしろ北朝鮮の金正日や金正恩を彷彿させる。

 アジテーターとしての力量も無ければ、革命家として実績もカリスマ性も無い習近平が、たとえ自らの神格化を図ったところで限界があろう。

 そのため習近平は、反対派を徹底的に排除し、市中に配備する大量の監視カメラに膨大な予算を投入して市民を監視下に置き、メディアやインターネットでの検閲と言論統制を強化して、事実上の恐怖政治を強行している。

 仮に多くの中国国民が共産党政権を支持しているように見えても、それはたまたま現在のところ中国経済が発展しているおかげである。

 しかも今日の中国経済の発展は、習近平の功績というよりはむしろ習近平にとっての「政敵」であった鄧小平・江沢民・胡錦涛の三代にわたり続けられた改革開放政策の成果であった事は歴史的事実である。

 経済成長には必ず「天井」があり、いずれ停滞期に入る事は避けられない。経済が悪化し、共産党支配の正統性が失われれば、人民が離れていくことになる。

 現在好調な中国経済が破綻した時、中国共産党政権の崩壊が始まるであろう。

 習近平は、市民監視と言論統制によって権力支配を強化してゆく以外に無い。

 また中国共産党は創立100年を祝賀する為、『中国共産党簡史』最新版の学習を全国で推進している。同書は毛沢東を賛美し、大躍進政策や文化大革命によって数千万人の国民が死亡した事実などについては一切触れられていない。



「中国人民との一体」を強調する中国共産党


 習近平は記念式典の演説で、「中国共産党は常に人民の根本的利益を代表し、人民と苦楽・生死を共にしており、自らの特別な利益を持たず、いかなる利益集団、いかなる権勢集団、いかなる特権階級の利益をも代表しない」と述べ、さらに「中国共産党を中国人民から切り離そうとするいかなる試みも成功しない。中国人民も同意しない」などと主張し、中国共産党と中国人民とは一体である事を強調していた。

 だが、習近平が主張する「中国共産党と中国人民は一体」というのは全く事実に反している。

 毛沢東の大躍進政策では、1958年から1965年の間に4500万人の人民が飢死したと中国共産党の内部文書には記録されており、中国国内で起こった混乱による犠牲者も含めると、「大躍進」による死者は7600万人との説が有力である。

 また1966年から10年間にわたり続けられた文化大革命による犠牲者数は、中国共産党の公式発表では死者40万人とされているが、実際には死者2000万人とも言われている。

 さらに1989年の天安門事件では、一夜の内に1万人を超える学生や市民が中国共産党によって殺害された。

 他にも、1956年から1959年まで続いたチベット動乱で中国共産党に殺されたチベット人の死者数はチベットの総人口の5分の1の120万人に上る。

 またウイグルでは、2017年以降だけでも100万人以上が強制収容所に入れられ、多くのウイグル人が臓器を摘出されて虐殺されている。しかもこれは現在進行中の出来事である。

 これらの数多の事実こそ、建国以来一貫して中国人民が中国共産党を受け容れて来なかった証拠に他ならない。

 もし習近平の言うように、「中国共産党が中国人民と一体」であり、両者が切り離せない関係なのであれば、何故これほど多数の「中国人民」を殺戮・粛清する必要があるのだろうか。

 言い換えれば、中国共産党の歴史は「中国人民」を弾圧する歴史であった。

 そもそも建国以来、民主的選挙が全く実施されず、一度も中国人民からの負託を受けた事が無い中国共産党が「中国人民」の代表である事などあり得ず、事実としては、中国共産党が中国大陸を不法占拠している状態が続いているだけである。

 実際の中国共産党は、中国人民に寄生しつつ中国人民を蝕み、やがては中国人民を死に至らしめる巨大なガン細胞に他ならない。

 これまで72年間にわたり、中国共産党が中国大陸を支配し続ける事が出来た理由は、中国共産党が決して情け容赦する事なく、反対派を殺戮・粛清し続けてきたからである。

「権力は銃口から生まれる」という毛沢東の言葉を信奉する習近平は、1991年にソ連が崩壊したのは、指導者達が肝心な時に「立ち上がって抵抗する男らしさが足りなかった」からだとかつて語った事がある。

 1989年に東欧諸国の社会主義政権が軒並み崩壊し去った時期、中国共産党は、天安門事件で「反革命暴動」を完全に鎮圧した上、国内の言論や情報を完全にコントロールし、その後は日本からの経済支援もあり、経済力や軍事力の増強を達成出来た。

 そのため、中国の現在の指導者層にとって、天安門事件での虐殺は「成功体験」であった。

 こうした中国共産党の性質は、国内のみならず、対外的にも適用される。



国際社会に対する「宣戦布告」となった習演説


 中国共産党は、中国国内のみならず、国際社会においても悪性腫瘍としての性質を発揮するようになった。

 今や中国共産党は、国際社会にも寄生し、自らに有利な場合のみ選択的に諸外国と協調しつつ、一方で国際社会のルールを蹂躙し、徐々に世界そのものを死に向かわせるガン細胞と化している。

 習近平は2012年の実権掌握以来、一貫して民族主義を煽り立てて中国人民を扇動し、世界覇権を目指して対外進出に乗り出そうとしてきた。

  習近平は今回の記念式典の演説において、「中国は常に世界平和の構築者であり、国際秩序の擁護者である」と述べた上で、「中国人民は、如何なる外来勢力も我々を虐め、抑圧し、奴隷化する事を決して許さない。こうした事を妄想した人は誰であろうと、14億人の中国人民が血と肉で築き上げた鋼鉄の長城に頭をぶつけ、血を流すことになるだろう」と述べた。

 習近平は演説で「強国」というワードを多用しながら、西側諸国のいう「国際基準」には屈しないとの姿勢を示した。その演説口調は威圧的であり、ある種の殺気を伴っていた。

 習近平演説にある「中国は世界平和の構築者であり国際秩序の擁護者である」との表現は、これからは中国が「国際基準」を構築して「パックス・シニカ(=Pax Sinica: 中国による世界平和)」をもたらすという意味に他ならない。さらに演説では、これに反対する外国勢力に対しては中国が武力を以て殲滅するという文脈が続く。

 習近平は、中国国内のみならず国際社会においても「反対派」を殺戮・粛清する事が正義であり、それが共産党の歴史的使命と信じているようである。

 中国共産党創立百周年記念式典における習近平演説は、現行の国際社会秩序とそのルールに対する「宣戦布告」以外の何物でもない。

 かつてチベット・ウイグル・内モンゴルなどは、「中国」ではなく「外国」であったが、殺戮や粛清によって中国共産党に支配された。

 そして現在の中国共産党は、数年以内に台湾を占領支配し、一帯一路の周辺諸国をも実効支配しようとしている。

 さらに、もしそうした中国の動きに対して西側諸国が抗議するならば、「14億人の中国人民が血と肉で築き上げた鋼鉄の長城に頭をぶつけ、血を流すことになる」というのである。

 明らかに中国共産党は、国際ルールと国際秩序の原状変更を試みている。

 中国共産党の過去の「成功体験」からすれば、中国に敵対する諸外国に対しても殺戮と粛清を実行すれば、それが中国共産党にとっては「世界平和」の国際秩序の実現になるのである。



中国共産党を非難する各国の動き



 6月25日、米下院の超党派議員は、中国共産党が過去100年間、深刻な人権侵害を行ってきたと非難する決議案を提出した。決議案は、「中国共産党は中国国民に対して残酷な大虐殺などを行った」とした。

 決議案は、1930年に遡って中国共産党が中国国民に対して行った残虐な行為を列挙し、「自由の為に戦う中国の人々」を支持すると述べている。

 また、「中共の100年にわたる弾圧、拷問、大量監禁、虐殺など重大な人権侵害を非難し、中国国民の民族自決と一党独裁から独立して自由な政治的表現をする権利を支持する。米国政府と同盟国などに対して中国における人権問題を支援するよう求める。中共が崩壊する日を待ち望む」と決議案に記されている。

 さらに同決議案では、中国共産党政権が1940年代に起こした大規模な土地改革運動において、200万~300万もの中国人が殺害された事が指摘されており、また50年代の「三反五反運動」で多くの中国人が処刑され、自殺に追い込まれた事や、大躍進政策の際に2000万~4000万の人々が餓死した事、文化大革命で逮捕や拷問を受けて処刑された犠牲者が100万~3500万人に上る事も述べられている。

 他にも、人権侵害の事例として、一人っ子政策を含む計画出産政策や1989年の天安門事件にも言及されている。また近年の事例として、法輪功学習者への弾圧政策と強制臓器摘出、キリスト教信者への迫害、さらに香港民主化運動への弾圧や新疆ウイグル自治区での反人道罪についても非難している。

 米下院の共和党議員と米民主党議員による超党派の今回の議決案は、中国共産党創立百周年に合わせて提出されたものであった。

 一方、英国議会においても、対中制裁強化を求める動きが活発化している。

 英下院外交委員会は、7月8日に提出した調査報告書において、新疆ウイグルの人権問題について、英国政府がより強い対中経済制裁を実施し、2022年北京冬季オリンピックをボイコットするよう求めている。

 当該報告書は、英国に亡命したウイグル人やその他の少数民族に対して保護措置を強化し、ウイグル族の文化を守るために資金を提供する事も提言した。

 さらに報告書では、国連人権高等弁務官等が新疆ウイグル自治区に入って現地調査を行うことを中国側が許可するように中国当局に圧力を強めていくべきであると述べられている。

 他方、我が国では、先般の国会で中国非難決議が廃案になるなど、先進国らしからぬ政治状況であり、西側諸国の一員としての国際的責任が未だに果たせない状況にある。

 米国や英国の議会において活発化している対中制裁議論が、日本の国会においてほとんど為されていない現状は、民主主義国家の議会の在り方としては大いに問題があると言えよう。

 確かに日本の国会内には、中国に抗議する「議員連盟」が複数存在しているが、それらが政権与党の無為無策を糊塗する為のアリバイ作りに利用されているだけであれば、真剣に取り組んでいる議員達が可哀そうである。

 社会学者マックス・ヴェーバーが述べたように、政治は「結果」のみが問われる職業である。

 国会は「立法」しなければ意味が無い。今必要なのは、対中制裁や人権救済を実現する為の具体的な立法行為なのである。











《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

一般財団法人
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