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国連で中国の人権侵害への非難声明


「自由」か「専制」かの二極対立時代


[2020.10.15]




新疆ウイグル自治区カシュガルの「再教育施設」という名の強制収容所
PHOTO(C)AFP



国連人権会議で中国への非難声明


 10月6日、国連で開かれた人権会議において、米国、英国、ドイツ、日本を含む39カ国により、中国の人権侵害を批判する声明が発表された。39カ国を代表して、ドイツのクリストフ・ホイスゲン国連大使が声明を発表した。

 同声明は、新疆ウイグルやチベットにおける人権侵害の問題として、宗教に対する厳しい制限、広範な非人道的な監視システム、強制労働、非自発的な不妊手術について指摘し、中国を非難した。また、100万人が収容されている新疆ウイグル自治区の収容施設に、国連人権査察団による「直接的で自由なアクセス」を、中国に対し要求した。

 オーストラリアのシンクタンク「戦略政策研究所」の報告によれば、新疆ウイグルにおいて2017年以降の3年間に新設・拡張された収容施設が380以上にも上るという。

 さらに同声明は、7月に中国共産党政権が香港で国家安全維持法を施行後、政治的抑圧が強まっていることについても非難し、中国政府が香港住民の権利と自由を守るよう要求した。

 1年前に国連人権会議で発表された同様の対中非難声明の際には署名国は23カ国であったが、今年は16カ国が新たに加わり、39カ国の署名となった。

 中国に批判的な国々に対し、中国は執拗な脅迫と威嚇を行っているが、それにも関わらず、多くの国々が今年の宣言に署名した事の持つ意味は大きい。

 この1年間で、ウイグルや香港における人権侵害の実態が世界中に知れ渡り、また中国の覇権主義や領土拡張主義がより露骨になった事などから、世界各国の中国に対する見方が変化してきた事の表れでもある。

 一方、中国は直ちに対抗して他の国々に働きかけ、ロシア、シリア、ベネズエラ、キューバなど45カ国が、中国の新疆ウイグル自治区政策を支持する声明を発表した。

 中国を支持する声明に署名したのは、多くが専制国家や人権侵害国家であり、あるいは対中債務を抱えた借金国である。

 国連を舞台とするこうした対立は、現在の世界が自由主義国家陣営と専制主義国家陣営の二極に分化され、両者の対立が不可避である事を如実に示している。

 最早、世界は「米中対立」という大国同士の確執の段階を超えて、全地球レベルで「自由」か「専制」かの選択を迫られる二極対立の段階に来ていると言えよう。



2022年北京冬季五輪ボイコットに向けて


 現在、英国やオーストラリアでは、2022年の北京冬季五輪へのボイコットが検討されている。

 日本では大半の人がほとんど意識していないと思われるが、北京冬季五輪は決して遠い未来の話ではなく、僅か1年3カ月後の事である。

 10月6日、英国のドミニク・ラーブ外相は、英議会の外交委員会に出席した際、中国による新疆ウイグル人への迫害の証拠が増えた場合、英国は2022年の北京冬季五輪をボイコットする可能性があるとし、「一般論としては、スポーツと外交・政治は分離しなければならないと考えるが、それが不可能な場合もある」と語った。

 さらに、英保守党の元リーダーであるイアン・ダンカン・スミス氏は、英国政府から国際オリンピック委員会に対し、中国の2022年の五輪主催権を「剥奪」するよう要請すべきだと提案している。

 またオーストラリア連邦議会は、11月から同国の北京冬季五輪撤退について審議を開始する予定である。

 オーストラリア連邦上院議員のレックス・パトリック氏、「緑の党」代表のカッシー・オコナー氏、自由党上院議員エリック・アベッツ氏、タスマニア州議員ジャッキー・ランビー氏らは、いずれも北京冬季五輪のボイコットを支持している。

 パトリック上院議員は、中国共産党による深刻な人権侵害を前にして、「オーストラリアの北京冬季五輪への参加は無謀で道徳的にも間違っている」と述べた。

「緑の党」のオコナー氏は、「オーストラリアは自国のアスリートを『大量虐殺が行われている全体主義体制の舞台』に送ることはできない」と主張した。

 またアベッツ上院議員は、国際オリンピック委員会が「野蛮かつ権威主義的、そして全体主義的な政権」に開催を許可した場合、同委員会の立場は大きく損なわれるだろうと警告した。

 我が国の場合は、東京五輪との兼ね合いもあるだろうが、北京冬季五輪ボイコットを視野に入れた議論が、今後必要になると思われる。

 コロナ禍の収束時期が予見出来ない以上、「東京五輪中止」と「北京冬季五輪ボイコット」という組合せが、理性的で賢明な政治選択であると考えられるが、現在の日本政府にそのような決断力は期待出来ない。

 世界が自由主義国家陣営と専制主義国家陣営に二極分化されつつある現在、西側の自由主義諸国が日本に期待しているのは、具体的な対中制裁の為の行動であろう。

 米国では、新疆ウイグルからの輸入禁止を目的とした法案が、9月末に下院で可決された。

 同法案は、新疆ウイグル自治区におけるウイグル人への虐待が恒常化しており、同地域で生産された全ての商品は「奴隷労働」により作られたと見做すべきだとする。

  今や米英豪をはじめとする自由主義の国々は、中国に対する制裁に向けて積極的に動いている。

 しかしながら我が国政府は、相変わらず対中宥和政策に終始し、事もあろうに、政府の下部組織が中国の軍拡に協力している始末である。

 日本国民の血税を使って、中国の軍事技術に奉仕している機関が、日本学術会議である。



日本学術会議会員の罷免は「国民の権利」


 菅新政権が発足して間もなく、日本学術会議の会員候補6名の任命拒否が問題となっている。

 菅首相が同会議から推薦された105名の名簿をきちんと見ることなく、6名の会員候補の任命を拒否していた事や、一方的に「何も問題ない」として説明を拒絶し、高飛車な態度を取り続ける事は、行政の最高責任者として極めて不誠実な態度であり、それこそが問題であると言える。

 しかしながら、この件に関して「学問の自由が失われる」といった指摘は当たらない。

 そもそも日本学術会議は内閣府所轄の特別機関であり、政府から独立した機関ではない。学術会議会員の任命拒否は、あくまで公務員人事の問題に過ぎず、「学問の自由」とは全く無関係の案件である。

 むしろ「学問の自由」を蹂躙し、「国民固有の権利」を否定している張本人が日本学術会議である。

 1949年に発足した日本学術会議は、1950年と67年に、「軍事目的の研究を一切禁じる」との声明を出し、国家の軍事技術に協力する事を拒否してきた。

 しかしながら、現在の日本学術会議は、中国共産党の科学技術機関と連携協力し、中国軍の軍事技術の向上に積極的に貢献しているのである。

 2015年9月7日、中国科学技術協会(中国・北京)において、日本学術会議の大西隆会長と韓啓徳中国科学技術協会会長との間で、協力の促進を図ることを目的とした覚書が締結された(下記画像参照)。

 覚書では、「両機関は、本覚書の範囲内で推薦された研究者を、通常の慣行に従って受入れ、研究プログラムの調整や、現地サポートの対応を行う」と記されており、「日本学術会議と中国科学技術協会」は「必要に応じて推薦された研究者を受け入れる」ことが可能となっている。

 中国共産党は、民間技術を軍事利用することを定めた「軍民融合」政策を実践しており、民間の科学技術を総動員することによって軍事技術および軍事力において世界一になることを目指している。

 習近平は、2012年11月に共産党中央総書記に選出されると、直ちに「中国のハイテク産業を緊急に促進させよ」との号令を発し、その後2年半にわたる専門家達による研究と調整を経て、2015年5月に発表されたのがハイテク国家戦略「中国製造2025」であった。

「中国製造2025」は、中国が従来の「組立て工場」中心の国家から脱却し、AIによるインフラ整備を推進することで、軍事技術の飛躍的向上や宇宙開発を実現する事を目的としている。

 こうした「中国製造2025」の推進の為には、米国や日本など海外の技術を積極的に取り込んだり盗用する事が必要とされた。

 かくして、中国共産党の科学技術機関(=中国科学技術協会)と日本学術会議との提携という流れになったのである。

 2015年5月に「中国製造2025」が発表され、それから僅か4カ月後の9月に日本学術会議との提携が実現した経緯を見れば、「中国製造2025」の遂行を目的とする提携であった事は明らかである。

「中国製造2025」は「軍民融合」を主要な柱としており、民間の科学技術を積極的に軍事転用してゆく事が重要な方針として謳われている。

 元々、「党が全てを決定する」事を国是とする中国においては、「学問の独立」などはあり得ず、学問、政治、科学、軍事は、全て一体である。

 日本学術会議がこうした事実を知らないはずが無い。

 2015年の日本学術会議と中国科学技術協会との提携は、日本学術会議が発足当初の「軍事研究禁止」という方針を完全否定し、中国の軍拡の為の基礎研究を担う組織へと変質を遂げ、覇権主義国家の翼賛団体と化した事を意味する。

 中国との提携から2年後の2017年、日本の防衛省が軍事転用可能な基礎研究に費用を助成すると発表した際に、日本学術会議は「国家安全保障の研究と学問の自由が緊張関係にある」などと称して、日本の安全保障技術への協力を拒絶した。

 日本学術会議は、中国共産党や中国軍の為の研究については「学問の自由」と称し、「日本政府は干渉するな」と主張する一方で、日本の安全保障につながる研究には協力を一切拒否している。

 このように、どこの国の機関なのか分からないような日本学術会議に、日本国民の血税が使われている事こそが問題であろう。

 内閣府の特別機関である日本学術会議は、年間10億5千万円に上る予算を国から受け取っており、210名の会員の立場はあくまで「国家公務員」である。

 日本国憲法第15条1項では「公務員の選定罷免権」が規定されており、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と明記されている。

 従って、国民から選出された国会議員が指名した内閣総理大臣に「公務員の選定罷免権」が存する事は、憲法上、何の疑う余地も無い。今回の菅内閣による日本学術会議の99名の会員の「選定」および6名の会員の「罷免」は、完全に合法であった。

 これに反対する日本学術会議は、憲法で保障された「国民固有の権利」を真っ向から否定し、不当な特権を主張していることになる。

 日本学術会議が、中国共産党を「後ろ盾」にして、日本国民の「固有の権利」を否定しているのが現在の状況である。

 また、日本学術会議が唱える「学問の自由」という言葉は、「日本政府に協力しない自由」という意味で用いられている。

 内閣府所轄機関であるはずの日本学術会議が、政府に非協力であるのみならず、「利敵行為」を働いているのであれば、廃止を検討した方が良いであろう。少なくとも日本学術会議を内閣府の所轄から外し、完全に「民営化」すべきである。

 さもなければ、日本政府は西側自由主義諸国からの不信を買い、国益を大きく損なう羽目に陥る可能性がある。

「自由」か「専制」かという二極対立の時代、我が国が自由主義諸国陣営の一角から外れるような事などあってはならない。




日本学術会議と中国科学技術協会との間で締結された覚書 (2015年9月7日)



















《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
東京都千代田区永田町2-9-6
十全ビル 306号
TEL: 03-5501-3413