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FMラジオ番組
「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













香港国家安全維持法に断固抗議する


香港の「再植民地化」を許すな


[2020.7.1]




香港中心部で「香港国家安全維持法」に抗議する香港市民(6月30日)
PHOTO(C)AP



習近平の野望の一里塚


 6月30日、中国の習近平国家主席は、香港での反体制活動を禁じる「香港国家安全維持法」に署名・公布し、同法は即日施行された。

 2014年の「雨傘運動」の元リーダーであった黄之鋒氏や周庭氏ら民主派は、米国などに中国への制裁を求める国際活動を展開してきたが、いずれも脱退を余儀なくされ、民主派団体「デモシスト(香港衆志)」も解散の憂き目に遭った。

 習近平によって強引に進められてきた香港国家安全維持法制は、1984年の中英共同宣言で定められた「一国二制度」や「高度な自治」を破棄するものであり、国際協調による中国の経済発展を目指してきた鄧小平路線の全否定でもある。

 毛沢東主義者で文革礼賛者でもある習近平は、中国における過去40年間の如何なる政治家とも異なる独裁志向の人物であり、国際外交の常識や西側の価値観が通用すると思ってはならない。

 鄧小平とその継承者達を憎悪し、毛沢東を崇拝する習近平の理想は、個人独裁と世界革命である。

 国家による個人情報の独占的管理をベースに、国内統制と国民監視を強化している中国は、今後、スターリン時代のソ連のような収容所国家になってゆくであろう。

 世界の覇権を目指す中国にとって当面の極東戦略は、「南シナ海の聖域化」であり、米国による探知が不可能な南シナ海の深海に、米国本土に照準を合わせたSLBM搭載の原子力潜水艦を配備する事である。

 この課題が達成された時に、ようやく中国が米国と肩を並べる「偉大な国家」になれるものと習近平は考えており、自分の代でその偉業を成し遂げようとしているのである。

 その為には、南シナ海への出口に当たる香港を完全制圧する必要があった。

 今回の香港国家安全維持法は、習近平にとって自らの野望実現の為の一里塚であり、一つの通過点に過ぎないのである。



香港を「再植民地化」する香港国家安全維持法


 今回施行された香港国家安全維持法の目的は、行政・立法・司法の全てにおいて、中国共産党と中国政府が香港を統治支配することにある。

 この法律により中国政府は、治安維持機関として香港に「国家安全維持公署」を設置し、香港政府が行政長官をトップとして設立する「国家安全維持委員会」の監督・指導にあたることになる。

 また中国当局は、香港において市民の活動を直接取り締まる事が可能となる。

 一方、立法会(議会)選挙への民主派の立候補は事実上禁止され、議会は中国共産党に一元支配される事になる。

 従来は香港では外国籍の裁判官も多く、「司法の独立」が確立されていたが、今後は香港の行政長官によって裁判官が指名されることになる為、判決に公正性が期待できないことになる。

 因みに国家安全維持法には、「香港の他の法律と矛盾する場合、国家安全維持法が優先される」との規定が盛り込まれている。

 今後、香港では言論・集会の自由や人権は失われ、「法による支配」から「党による支配」へと移行することになる。

 こうした状況は、謂わば香港の「再植民地化」に他ならず、香港市民にとっては、かつての英国に代わって、新たに中国の植民地にされただけの事である。

 むしろ英国による統治時代の方が、香港市民は自由であり、思想信条を理由に逮捕される事もなく、中国による統治に比べれば遥かに幸福であったと言える。

 国家安全維持法の重大な問題点は、「国家分裂」など4つの処罰対象の定義が曖昧であり、当局の裁量や拡大解釈によって、恣意的な逮捕拘束が可能となる事である。

 例えば、「香港独立」を主張すれば「国家分裂」を企んだとされ、中国共産党や香港政府を批判すれば「政権転覆」を画策したとされる。また、街頭デモが「テロ活動」と見做されれば、即逮捕拘束ということになる。

 さらに国家安全維持法は、国籍や人種を問わず、外国人も処罰対象となり得る。

 従って、欧米などの外国人が香港の民主派を支援する活動が、「外国勢力との結託」として違法と見做されれば、支援を受けた香港人と支援した外国人の双方とも処罰されることになる。

 こうした香港支援の為には、民間レベルでは最早限界があり、世界各国が動く以外にない。

 日米欧の主要7カ国(G7)の外相は、6月17日の共同声明で、国家安全維持法の制定を急ぐ中国に対して「重大な懸念」を示した。

 またトランプ米政権は、6月26日に香港問題に関わる一部の中国共産党員へのビザ発給の規制を発動すると発表したのに続き、29日には香港に認めてきた軍民両用技術を輸出する際の優遇措置を取りやめるとした。

 米国ではすでに昨年11月27日に、「香港人権・民主主義法」が成立しており、中国に対する制裁条項をも規定している。

 我が国の国会においても、香港市民の人権を守る為の法案を成立させる等の活動が必要であろう。

 今こそ、中国に対し抗議すべき事は抗議し、対中制裁をも視野に入れた法案を国会で議論する等の努力が、安倍政権をはじめ全ての国会議員に求められている。

 そうした日本の政治家の活動が、香港の人々に対する大きな支援になるはずである。

 当財団は、香港国家安全維持法に断固として抗議し、自由を希求する香港市民との連帯を表明するものである。










《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
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TEL: 03-5501-3413