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台湾独立に向けた歴史的勝利


蔡英文圧勝の歴史的意義


[2020.1.15]




台湾総統選挙で再選を果たした与党・民進党の蔡英文総統
(C)GETTY IMAGES



民進党・蔡英文氏が圧勝した台湾総統選


 1月11日、台湾で4年に1度の総統選挙が行われ、現職の与党・民進党の蔡英文総統が再選された。

 蔡英文総統の得票は817万票余りにも上り、1996年に台湾で初の直接投票による総統選挙が行われて以来、最多得票となった。

 また、同時に行われた議会にあたる立法院の選挙も、113議席の内、民進党が61議席、国民党が38議席と、民進党が過半数を維持した。

 蔡英文総統は11日夜、記者会見を行い、中国に対して「武力による脅しを放棄すべきだ」と述べ、台湾統一を目指して武力の行使も辞さないとする中国に対抗する姿勢を示した。

 4年前に蔡英文政権が発足して以降、中国は、「1つの中国」の原則を受け入れない蔡英文政権に対して、外交や軍事、経済面で様々な圧力を強めてきた。

 蔡英文総統には、今後ますます苦難の道が待ち受けているものと思われるが、中国に対抗する姿勢で臨む方針が民意の圧倒的支持を得たのであるから、従来にも増して健闘を期待したい。

 まずは、蔡英文総統の選挙戦勝利に、心より祝意を表するものである。



台湾情勢の転機となった「習五条」


 今から1年前の2019年の年初には、民進党の蔡英文政権は危機的情況にあった。

 一昨年の2018年秋の地方選では、民進党が惨敗を喫し、政権支持率は20%台にまで下落し、「蔡英文では2020年の総統選挙は戦えない」との見解が大勢を支配していた。

 こうした蔡英文政権の支持率低下の最大の原因は、台湾経済の慢性的な低迷にあった。

 蔡英文政権が推進していた脱原発やLGBT婚などのリベラル政策は、一部の岩盤支持層には受けても保守層の反発が強く、一般国民からは「そんな事より経済を何とかしろ」との声が多かったのである。

 その為、中国との協力による経済発展を公約にしていた親中派の国民党に多数の支持が集まり、2018年秋の地方選では、中国のネット世論誘導の援護を受けながら「ワンフレーズ」選挙を展開した野党の国民党が大勝したのだった。

 一方、中国の習近平は、こうした台湾国内の動向を虎視眈々と窺いながら、そのまま一気呵成に台湾併合を実現出来ると錯覚してしまったようである。

 台湾との統一は、中国にとって「太平洋への出口」の確保という極めて重要な地政学的意義がある。

 2017年10月の第19回中国共産党全国代表大会において、「中華民族の偉大な復興の下に人類運命共同体を構築する」と宣言した習近平にとって、台湾は中国の世界戦略を遂行する上で絶対不可欠の重要拠点なのである。

 2018年から2019年の前半にかけて、蔡英文政権が瀕死状態になり、親中派の国民党が圧倒的優勢になってきた情勢を見て、習近平は、いよいよ台湾を手中に収める絶好の機会が到来したと確信したのであろう。

 そこで昨年(2019年)1月2日、習近平は「台湾同胞に告げる書」発表40周年記念大会において、「習五条」と呼ばれる強硬な台湾政策を発表したのだった。

「習五条」とは、
1.平和統一の実現
2.「一国二制度」の適用
3.「一つの中国」堅持
4.中台経済の融合
5.同胞・統一意識の増進
の5項目である。

 しかしながら、「急いては事を仕損じる」と諺にもあるように、結果的にこの「習五条」演説が、習近平および中国共産党にとって致命的な失策になってしまったのである。

「習五条」第1項の「平和統一の実現」とは、中国共産党の言いなりになる傀儡政権の樹立等によって、なるべく戦闘なしでの併合を目指すという意味である。

 第2項の「一国二制度」の適用とは、香港のように、「中華人民共和国の一部になっても体制は何も変わらないから大丈夫」と騙しながら併合し、そのうち中国共産党による独裁体制に完全に組み込んでゆく戦略である。

 第3項の「一つの中国」堅持とは、「中華民国(あるいは台湾)という国は地球上に存在しない」という確認であり、「独立は絶対に認めない」という警告である。

 第4項の「中台経済の融合」とは、台湾の経済システムの独自性を否定し、中国の経済システムに吸収併呑させる戦略である。かつて世界の金融センターであった香港の地位が上海に完全に取って代わられたように、台湾はいずれ「ただの島」になってしまう事になる。

 そして第5項の「同胞・統一意識の増進」とは、「台湾の中国化」および「台湾人の中華民族化」を意味しており、台湾が中国に占領支配されたチベットや新彊ウイグルと全く同じ境遇に置かれるという事である。

 習近平は同演説で、「台湾問題は民族の復興によって必ず終結する」と述べ、さらに「あらゆる必要な措置を取る選択肢を保有する」と表明し、台湾併合への強い意欲を示した。

「あらゆる必要な措置を取る選択肢を保有する」とは、「なるべく平和的な併合が望ましいが、必要とあれば武力行使をする」という意味であり、台湾独立の動きや外国の介入に対しては、戦争をも辞さないという意思表明である。

 中国共産党の常套句である「中国人は中国人を攻撃しない」とは、「台湾人」を名乗れば攻撃するという恫喝でもあり、現に「香港人」を名乗る多くの市民が無差別に攻撃されている現状を、世界中の人々は目にしているのである。



事を急ぎ過ぎた習近平の失敗


 昨年1月に「習五条」が打ち出されると、直ちに蔡英文総統は、「一国二制度」に対して断固とした拒絶の態度を示した。

 それだけでなく、新冷戦体制下、「反中国」を国家方針とするに至った米国が、伝統的な国民党支持路線を放棄し、「反中国」の民進党支持路線へと転じたのである。

 昨年、米トランプ政権は台湾に対し、100両を超える戦車や対空ミサイルやF16戦闘機の提供を決定し、軍事的にも台湾防衛を明確にし、中国への対抗姿勢を示している。

 そして追い打ちをかけるように、昨年6月、香港において「反送中デモ」が勃発した。

 香港の100万人規模のデモと、その後のデモに対する警察当局による暴力がエスカレートするにつれて、台湾国内の世論は「中台統一反対」へと向かうことになった。

 台湾の人々は香港情勢を通じて、中国共産党のいう「一国二制度」の恐るべき実態を知るに至ったのである。

 かくして、蔡英文や民進党の支持率は急上昇し、親中派の国民党は急速に支持を失っていった。

 ほんの1年前までは、香港も静謐であり、台湾においては国民党が優勢で、蔡英文の総統再選の可能性など皆無であった。にも関わらず、僅かこの1年足らずの間に事態は大きく逆転した。

 昨年12月に米国議会上院で可決された「米国防権限法」では、「米台間のサイバーセキュリティ―での連携」、「台湾総統選への中国の干渉への警戒」が盛り込まれた。

 台湾立法院でも、年明け早々に中国の選挙干渉を防ぐための「反浸透法」を可決した。この新法によって、国外の「敵対勢力(=中国)」による選挙運動やロビー活動、政治献金、社会秩序の破壊、選挙に関連した虚偽情報の拡散などの活動が禁止されることになった。

 今や台湾は、中国からの影響を徹底的に排除する社会へと変貌を遂げた。

 今回の蔡英文総統再選の持つ意味は非常に大きい。

 2020年1月の台湾総統選は、「一国二制度による中国との統一に賛成か反対か」というワンイシューの選択肢を有権者が判断する国民投票の意味を持った選挙でもあった。

 その結果、台湾の人々の民意が明確に示されたのであり、今後は「台湾独立」へ向けた動きが具体化するであろう。

 昨年来、米国が台湾への大規模な軍事支援を再開し、中国の軍事力に対抗している為、台湾で独立運動が本格化すれば、米国は台湾独立を支援する事が予想される。

 米国としても、将来的に米韓同盟が失われた場合の保険として、極東における強固で緊密な同盟国がもう1つ必要となってくる。

 地政学的にも、東シナ海で中国を封じ込め得る自由主義国家が独立して米国と同盟関係になれば、我が国にとっても心強い限りである。

 2018年以降、世界はすでに米中新冷戦体制に突入している。

 習近平は、香港への対応のみならず、台湾への対応にも失敗した上に、藪蛇の結果として「米台軍事同盟」まで招来してしまい、「中台統一」の機会は消滅した。

 事を急ぎ過ぎて失敗した習近平は、今後党内において責任を問われる事になるだろう。

 習近平の失脚を狙っている政敵は数多く、習近平の失敗を彼等が見逃すはずが無いのである。

 時代の流れは加速度を付けながら急速に展開している。

 2020年は、世界にとっても我が国にとっても本格的に激動の年となるであろう。










《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




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