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 理事長プロフィール





FMラジオ番組
「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













国境の壁の為の非常事態宣言が持つ意味


アメリカの国家の存在意義の否定


[2019.2.18]




メキシコとの国境のフェンスに鉄条網を設置する米海兵隊



非常事態を宣言したトランプ大統領


 2月15日、トランプ米大統領は、南部国境の壁建設資金の捻出の為、国家非常事態を宣言した。

 14日に議会が可決した予算案は長さ55マイル(約89キロ)のフェンス建設に13億7500万ドル(約1520億円)の支出を盛り込んでいた。

 トランプ大統領はこれに署名して再度の政府機関閉鎖を回避した上で、非常事態を宣言することで、さらに数百マイル分の建設に必要な60億ドル以上の資金の捻出を狙っている。

 建設費の総額は80億ドル近くに達する見込みである。

 トランプ大統領は、南部国境で薬物や不法移民の「侵入」が起きていると強調しているが、非常事態宣言の裏付けとなる具体的事実や正確な統計に基づく証拠は示されていない。

 トランプ大統領が南部国境に「危機」が存在するとの主張を展開していたのに対し、民主党は、存在するのは「安全保障上の危機」ではなく「人道上の危機」だと主張してきた。

 民主党をはじめ諸々の団体は、非常事態を利用して納税者の資金で国境の壁を建設することはできないと主張している。

 今後は、下院で民主党が国家非常事態宣言を無効にする決議を求めるものと予想される。ただし、民主党優勢の下院で可決された後、万一、共和党が過半を占める上院で可決されたとしても、大統領は拒否権を発動できる。

 また、 トランプ大統領は法廷闘争も想定しているとも発言しており、最終的には連邦最高裁で勝利するとの見込みも示している。

 今後は、非常事態宣言が粛々と遂行されることは確実のようである。



中米「移民集団」がアメリカへ逃げている理由


 日本のマスメディアでは、なぜアメリカ南部国境へ移民が殺到しているのかについては、ほとんど報道されていない。

 アメリカ国境を目指す移民集団が発生したのは、中米のホンジュラス共和国である。

 ホンジュラスでは昨年10月中旬、インターネットのSNSを通じて移民が結集し、アメリカを目指すようになったのだが、当初160人だった「キャラバン」と呼ばれる移民集団は徐々に膨張し、グアテマラとメキシコの国境地点では、7000人を超える規模に膨らんだ。

 「キャラバン」には、ホンジュラスだけでなく、途中でエルサルバドルやグアテマラなどから参加した人々も多数含まれるものと見られる。

 ホンジュラスからアメリカへの距離は約4000キロもあり、それを徒歩で踏破してやって来たのであるから、相当な覚悟のほどが窺える。

 ユニセフの発表によると、「キャラバン」の中には約2500人の子供がおり、多くが病気にかかっているという。

 多数のホンジュラス人がアメリカに移民しようとする理由は、主に3つある。

 第一には、ホンジュラス国内における食糧難である。

 ホンジュラスは、ラテンアメリカにおける最貧国とされ、人口約1000万人の内、約6割は貧困層に相当し、人口の約4割が食糧難に喘いでいると言われる。

 また、耕作技術のレベルが低く、害虫の被害も多い中、近年ではエル・ニーニョ現象で旱魃に見舞われており、国土は飢餓状態に置かれている。

 ホンジュラス人がアメリカへの移住を求める第二の理由は、治安の悪さである。

 ホンジュラスでは麻薬カルテルなどの違法組織が社会全体に蔓延し、殺人件数も桁外れに多い。ホンジュラス国内で1年間に約4000件の殺人事件があると言われ、これは10万人につき40人が殺されている計算である。

 因みに、ホンジュラスを抜いて世界一の「殺人大国」となっているエルサルバドルでは、10万人につき約60人が殺害されているという。

 第三の理由は、政治的不安定である。

 現職のエルナンデス大統領は汚職に関連するスキャンダルが尽きず、自らは私腹を肥やす一方で、国民には貧窮を強いている。

 2017年秋には、大統領選で不正があったと野党候補が主張したことを契機に、ホンジュラス全土で暴力を伴うデモが発生したが、これに対して、エルナンデス大統領は12月1日に非常事態を宣言し、夜間外出禁止令を出し、反対派の弾圧を展開した。

 こうした中では、国民の生活を改善するような施策など期待出来るはずもない。

 座して死を待つよりは、新天地を目指そうという人々が多くなるのも当然である。



壁を造って国を壊すトランプ大統領


 長年にわたり、「アメリカは自由の国」と言われてきた。

 その理由は、他国において迫害されてきた人達を、アメリカ合衆国は必ず受け容れてきたという歴史を有している為であり、自由を求める人々にとって最後の希望の砦であったからに他ならない。

 20世紀には、ナチスドイツによる迫害から逃れて来た数多くのユダヤ人達を、アメリカはビザ無しで受け容れた。

 また、1845年のアイルランドの「ジャガイモ飢饉」を契機に、大量のアイルランド人達が母国から逃れた際にも、それらのアイルランド人移民をアメリカは入国させた。

 このように、宗教や宗派を問わず、外国人移民や難民を受け容れてきたのが、アメリカの国是であったと言える。

 そもそも、1620年にイングランド国教会の弾圧から逃れて来た102名の清教徒達が、メイフラワー号に乗って現在のボストン近郊に上陸した事が、いわばアメリカの起源であり「国生み神話」である。

 「ピルグリム・ファーザーズ」と呼ばれるこの102名の清教徒達は、紛れもなく今で言うところの「難民」であった。

 他国から逃れてやって来た避難民達が創り上げてきたコミュニティこそがアメリカという国家に他ならず、こうした歴史的事実が「自由の国」たる最大の根拠であったはずである。

 こうしたアメリカのエートスとも言うべき規範は、19世紀のモンロー主義の孤立主義外交の時代においても変わることはなく、移民や難民の受け容れは続けられていた。

 これに対し、現在トランプ大統領が強力に推進している自国第一主義は、決して伝統的なアメリカの復権をもたらすものではなく、むしろアメリカ本来の国家理念を完全否定する愚挙以外の何物でもないと言える。

 他国において迫害された人々が自由を求め命懸けで入国を求めているにも関わらず、アメリカ政府が壁を建設して排除するというのであれば、最早アメリカという国家の存在意義すら失われると言っても過言ではない。

 かつてリンカーンが「神の国」とまで呼んだアメリカ合衆国が、どこにでもある普通の国になるということである。

 アメリカが自由を求める人々にとっての最後の希望の砦でなくなるのであれば、中南米諸国と大差ない平凡な国に過ぎなくなるだろう。

 即ち、トランプ大統領が公約に掲げ実行しつつある国境の壁建設は、過去数世紀にわたり先祖が築き上げてきたアメリカ神話の破壊行為であり、長期的に見れば、アメリカが解体へと向かう第一歩に他ならない。

 国境の壁建設の影響は、今後長い歳月をかけてボディーブローのようにアメリカ社会に後遺症をもたらすであろう。

 21世紀中にほぼ確実視されているのが、合衆国の「南米化」である。

 トランプ大統領は、合衆国を「南米化」したくないという思いから壁建設をやろうとしているのであるが、むしろその意図とは逆に、アメリカ合衆国が本来の理想を失ってただの国になる事により、「南米化」が進行するものと予想される。

 まさに、「壁を造って国を壊す」行為に他ならない。

 ポピュリズムや衆愚政治が極まれば、国家の理想も歴史も文化も失われるものであるが、民主主義の長い伝統を持つアメリカも決して例外ではない。

 所謂「トランプ旋風」がアメリカの歴史における一大事件である事は間違いないが、果たしてこれが一過性の現象として短期的に終息するものであるのか、あるいは今後も延々と続く時代の出発点となるのかは、この国境の壁問題の顛末に懸かっていると言えよう。











《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




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