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FMラジオ番組
「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













2019年 年頭の御挨拶


チベット侵略60周年、天安門事件30周年にあたって


[2019.1.1]




1989年6月4日、1万人の市民が虐殺された天安門事件



あらゆる意味において節目の年


 新年明けましておめでとうございます。

 本年は、国内においては新天皇陛下の御即位と新元号の採用が予定されており、大きな節目となる年であります。

 一方、隣国の中国は、建国70周年ということで、盛大な行事を計画している事でしょう。

 しかしながら同時に、今年はチベットが中国に侵略併合されてから60周年、また「北京の春」と呼ばれた中国民主化運動が鎮圧されて40周年、さらに、1万人もの市民が人民解放軍によって虐殺された「六四天安門事件」から30周年に当たる節目の年である事を忘れてはなりません。



急速なイノベーションを可能にした体制


 現在の世界において最も覇権主義的国家である中国が、総力を挙げて目指しているのは、AI(人工知能)の世界標準の確立を通じて、世界と人類を支配する事です。

 すでにスーパーコンピューターの分野では、ここ数年来、中国が世界一の座を独占し続けており、日本や米国の追随を許さない水準に達しています。

 中国国内においては、AI技術を駆使した監視制度が急ピッチで整備され、AIの「顔識別技術」によって公道を往来する全ての通行人の身元を瞬時に割り出したり、SNSなどネット上の監視によって、共産党の脅威となる人物を特定したりしています。

 もしも中国のシステムが次世代AIの世界標準となれば、世界中の人々が中国共産党の監視下に置かれるという、人類家畜化の「収容所惑星」が実現することになるでしょう。

 また中国は、世界一のAI技術を駆使した新兵器の開発にも邁進しており、米国の軍事力を凌駕するのは時間の問題と見られています。

 さらに年頭早々に、月の裏側に探査機を着陸させた事実もまた、中国の技術水準の高さを物語っています。

 中国はこのように世界最高水準のAI技術をベースにして、「軍事大国」「製造大国」「海洋大国」「インターネット大国」「宇宙大国」といった目標を着実に実現しつつあります。

 中国が短期間にこれだけのイノベーションを成し遂げ得た最大の要因は、「国家主導で資本主義を推進する」という開発独裁型の国家資本主義(State Capitalism)の体制にあります。

 本来「資本主義」とは、市場原理に基づく民間の経済活動であって、18世紀以降の英国の産業革命なども民間主導で達成されてきました。

 しかしながら、19世紀後半の明治日本や第二帝政ドイツのような後発資本主義国においては、国家官僚制による「上からの」指導と資本配分によって、短期間で急速な進歩発展が実現されました。

 それまで先進国によって様々な成功事例や失敗事例等々が蓄積されてきたおかげで、先発資本主義が100年かけて実現した事を、後発資本主義は四半世紀もあれば達成する事が可能になったのでした。

 同様の事は、戦後復興期の日本にも当て嵌まります。また、韓国の朴正煕大統領による「漢江の奇跡」と呼ばれた経済成長も、「国家資本主義の賜物」と言えるでしょう。

 このように、国家主導で資本主義を推進する場合は、後発資本主義国の方があらゆる面で有利に働きます。

 従って、現在の中国の急速な発展も、あくまで「後発資本主義の優位性」を証明する事例の1つに過ぎないのであって、決して中華民族の優位性を示すものでもなければ、中国の覇権主義を正当化する根拠にもなり得ないという事は、明らかにしておかなければなりません。

 習政権成立後、中国の市場経済化路線には終止符が打たれ、国家資本主義経済へと移行しました。

 現在の中国の成長を牽引しているのは、共産党中央が統轄する独占企業集団です。資源、エネルギー、通信、鉄道、金融の5分野の独占企業体が、国務院直属の資産管理監督委員会の直轄下に置かれ、各企業体の経営陣は各級の共産党幹部によって独占され、中国共産党の独裁体制を支えています。

 このように、中国の経済体制は本来の資本主義とは全く似ても似つかぬ別体制なのです。

 これまで米国の指導層は、「中国が経済的に発展すれば、中国は市場を尊重した自由な民主主義国家になるはずだ」などと考え、数十年にわたり経済的には友好関係を保ってきました。

 しかしながら、習政権が欧米とは全く別の道を進む事が明白になった為、現在の米国は中国を敵認定して戦略を再構築するに至っています。

 昨秋10月のペンス演説や、米中経済戦争、ファーウェイ・ZTE排除政策なども、こうした流れの一環です。



2019年に予想される世界バブル崩壊の兆候


 自由世界にとっての危機は、中国の覇権主義だけではありません。

 現在、全世界の通貨供給量は、実体経済の規模を遥かに超えて膨張しています。

 世界の通貨供給総量は88兆ドル(約1京円)であり、これは世界のGDP総額よりも16パーセントも多い金額です。

 本来、マネーの増加は実体経済の成長と比例しなければなりません。

 それが、2008年のリーマンショックを転機に、主要各国の中央銀行が一斉に金融緩和政策を推進した結果、2009年以降はマネー供給量がGDPを大きく上回るようになりました。

 マネー総量と実体経済との乖離は、年々拡大し続けています。

 かくして世界の通貨供給量は、この10年間で76パーセントも膨張しました。これはかつて無い異常事態です。

 低金利で供給過剰状態のマネーは、当然の帰結として、金融商品や不動産市場に大量に流入しました。

 その結果、2009年春には30兆ドルを割り込んでいた世界の株式時価総額が、2018年には過去最大の約83兆ドルにまで増加しました。

 世界の株価は連動していますので、海外の株価上昇に釣られる形で日経平均株価もこの10年間で8千円台から2万円台まで上昇しました。また主要国通貨の過剰供給によって世界的インフレが創出された為に、表面上は日本のデフレも中和されて好景気になったかのように見えました。

 こうした現在の世界経済の姿は、30年前の日本経済に酷似しています。

 1985年のプラザ合意に伴う円高不況を克服すべく、日銀は金融緩和を続け、バブルが生み出されたのでした。

 即ち現在の世界は、かつて日本で起きたバブル崩壊の何万倍ものメガ・バブル崩壊がグローバルな規模で発生し得る非常に危険な状態に置かれているのです。

 今年2019年は、東京オリンピック需要の終了に伴う日本経済の景気後退と、米中経済戦争に伴う米国経済の失速が予測されています。また、ヨーロッパではドイツ銀行危機や英国のEU離脱の問題があります。

 このように、世界バブル崩壊のトリガーは至る所に仕込まれています。

 バブル崩壊後には長期に及ぶデフレ状態になる事は、我が国の例でも明らかです。世界バブルが崩壊した後は、数十年にわたって世界デフレ不況が続く可能性があります。

 行き過ぎたグローバリズムや市場原理主義が、多くの市民にとってマイナスでしかないことが明らかになれば、それに代わる経済システムを、やがて世界中の人々が希求するようになるでしょう。

 そうした中、経済において一人勝ちを続ける中国が、「世界冊封体制」の盟主として名乗りを上げて来るかも知れません。

 習主席が提唱する「一帯一路構想」は、中国国内で飽和した公共事業を国外に移転させながら、同時に中国国内の余剰労働人口と余剰人民元を国外に放出させる事によって、「中国版バブル」の崩壊を回避する戦略でもあります。

 言い換えれば、中国は「バブルの輸出」によってバブル崩壊を先送りしているわけです。肥大化したバブル構造を、自転車操業のように順次国外へと移転させ続ける限り、「中国版バブル」は崩壊しないという仕組みです。

 2008年のリーマンショックの際、中国のメディアは、「1978年には資本主義が中国を救い、2008年には中国が資本主義を救った」などと豪語していました。

 2019年以降、欧米の金融バブルが崩壊して世界がカオス化する最中、中国はさも「救世主」のような出で立ちで全世界に君臨しようとする事が予想されます。



覇権主義から自由を守る為に


 習主席が構想する「中国が全ての分野において米国を凌駕して世界覇権を握る」という目標の2049年まで、残り30年である事を考えれば、「六四天安門事件」から30年目の今年は、丁度中間点に当たります。

 このまま自由諸国が何もしなければ、30年後の世界は中国の覇権主義の軍門に降る事を余儀なくされるかも知れません。

 ただし、30年前の天安門事件当時に、中国の今日の姿を予見出来た人は、世界中に誰一人としていませんでした。

 ならば、「2049年から30年前」の2019年であれば、世界はまだやり直しがきく可能性があると言えます。

 いよいよ今年からは、本当の意味で、覇権主義から自由を守る為の思想と行動が必要となるでしょう。

 人権財団は、これまで以上に問題提起を続けて参ります。











《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




 定款(PDFファイル)




《連絡先

一般財団法人
人権財団本部
〒100-0014
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TEL: 03-5501-3413