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 理事長プロフィール





FMラジオ番組
「まきの聖修の、出せ静岡の底力」













中国当局による退役軍人デモ武力鎮圧


─ 共産党独裁体制崩壊の始まり


[2018.7.15]




生活支援を求め当局に抗議する退役軍人達 (中国江蘇省鎮江市政府庁舎近辺)



「軍人版天安門事件」と揶揄される事態に

 6月下旬、中国江蘇省鎮江において大規模な退役軍人デモが行われ、当局による鎮圧の結果、デモ側に3人以上の死者と多数の負傷者が出た上、2千人もの退役軍人達が拘束されたという。

 また、6月中旬にも四川省中江県で、中越戦争で障害を負った元軍人が自宅で警察官に暴行され、それに抗議する数百人規模のデモが発生した。

 中国には5千万人以上もの大量の退役軍人がいるが、政府はそれだけの人々に十分な年金や恩給を支給する事が出来ない為、退役軍人への生活支援を求めるデモは、これまでにも北京をはじめ中国各地において頻発していた。

 そうした中、6月19日から24日にかけて、習体制に不満を持つ退役軍人達は、中国ネットSNSでの呼び掛けに応じ、全国22省から続々と鎮江市の政府庁舎に集結し、迷彩服姿で市内を行進するなどした。香港の新聞報道によれば、5~6万人規模のデモであったという。

 退役軍人であることを示す為に迷彩服を着用していたとはいえ、あくまで非武装の平和的デモであった。

 これに対し、1万人の武装警察が出動し、鎮江市政府庁舎周辺で、退役軍人と武装警察が衝突し、デモ側の退役軍人の一人が頭から血を流して倒れた事を契機に、怒ったデモ側が暴徒化したようである。

 収拾がつかなくなった為、市当局は軍の出動を依頼し、23日未明には、2万人の人民解放軍が退役軍人デモ鎮圧のために出動したとされる。

 その弾圧の様子は89年6月4日の天安門事件を彷彿とさせるものがあり、ネット上では「軍人版天安門事件」と揶揄されている。

 しかしながら「退役軍人」といえば、かつては国家に命懸けで奉仕してきた「英雄」であるから、これまでは当局も、退役軍人のデモに限っては対話による解決をしてきたのが慣例であり、今回のように軍および武装警察に鎮圧させる事などあり得なかった。

 習近平政権は、最初の5年の任期で軍制改革に着手し、大規模なリストラと軍部の利権剥奪と汚職摘発を名目にした粛清を続けてきた。

 政界や財界のみならず軍閥においても江沢民派を一掃する事によって自らの権力基盤を磐石なものとした習近平政権としては、「人民解放軍は完全に掌握した」と判断したものと考えられる。

 一方、軍を追われた人々の大半は、ホームレスに近い境遇に置かれているという。

 近年頻発している退役軍人デモには、こうした背景がある。そうして、先月の江蘇省における事態は、軍の身内同士による流血事件にまで発展した。

 これはあたかも、習近平派によって固められた軍部が、江沢民派の残党に血の粛清を行っている図式である。

 今回のデモの現場となった江蘇省鎮江は、江沢民の故郷の揚州の隣の都市であり、いわば江沢民の地元である事から、デモと江沢民との関係も取り沙汰されているが、いずれにせよ鎮江市当局としては、断固たる鎮圧の姿勢を示す必要があったと考えられる。

 ただし、政府当局による元軍人に対する今回の対応は、後々にわたり大きな禍根を残す事は間違いない。

 習近平からすれば、退役軍人などは「江沢民派の残党」にしか見えないのであろうが、「軍人精神」を全く理解せずそれを踏み躙るような党指導部に対し、軍が未来永劫にわたり忠誠を誓う事などあり得ない。

 習近平は、2049年までに世界一の軍隊を作るという目標を掲げているが、現在のような退役軍人に対する過酷な扱いを続けていれば、やがて軍は党から離反し、体制の瓦解をもたらすであろう。













《財団概要》

名称:
一般財団法人 人権財団

設立日
2015年 9月28日

理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)




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