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「まきの聖修の、出せ静岡の底力」
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オバマ大統領の広島訪問について
─── 日米関係の最終的和解の実現 ───
[2016.5.28]
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PHOTO(C)JIJI.COM |
原爆慰霊碑の献花の前で黙祷するオバマ大統領 (於・広島平和記念公園) |
1.「核なき世界」の幻想
米国のオバマ大統領は、5月27日午後、現職の大統領として初めて被爆地である広島を訪問した。
民間からは「謝罪」を求める声もあったが、日本政府が米国側に対して「謝罪」を求めなかったのは賢明であった。
本当の「和解」は、「謝罪」によって生まれるものではないからである。
「原爆投下は正しかったか否か」といった類のアンケート調査は今でも米国で行われているが、もしも1945年当時のトルーマン大統領の立場に立たされれば、誰もがトルーマンと同じ選択をしたはずである。
原爆開発のマンハッタン計画には莫大な国家予算が注ぎ込まれており、多くの科学者が何年もかけてようやく完成した新兵器を「使用しない」という選択肢など、最初からあり得なかった。万が一、トルーマン大統領が「原爆は使用不可」などと決定したならば、暗殺されるか、国家が分裂したであろう。
哲学者ハンナ・アーレントは、ナチスのユダヤ人大虐殺の実行者アイヒマンに人間の持つ「悪の凡庸さ」を見出したが、トルーマン大統領もまた、巨大なシステムの中で一つの歯車として動いていた「凡庸な小役人」に過ぎなかったのである。
それと同様の事は、全く別の意味において、オバマ大統領にも当て嵌まる。
オバマ大統領が就任直後の2009年に行ったプラハ演説においては、「核なき世界」に向けた強い決意があり、具体的な行動計画も示されていた。この演説1つで、オバマ大統領はノーベル平和賞を受賞したのだから、それだけ世界の期待も大きかったと言えよう。
しかしながら、今回の広島演説は、プラハ演説と比較すれば全く精彩を欠き、「核なき世界」へのファンタジーが語られただけであった。広島演説では、リンカーン大統領やキング牧師の名演説の言い回しの模倣が随所に見られ、美辞麗句が羅列されていたが、肝心の核廃絶に向けた具体的な内容は皆無であった。
何よりもまず、国家としての米国は、核軍縮をやる意志は全く無い、という厳然たる事実がある。
この7年間の大統領職を通じて、核廃絶が事実上不可能であることを、オバマ大統領もよく理解したものと見られる。
国防総省が公開した情報によると、米国が保有する核兵器の数は、2015年会計年度の時点で4571発である。
オバマ大統領が就任した2009年から2015年の7年間に削減された核兵器の数は僅か702発であり、率にして13%に過ぎず、これは冷戦終結後の歴代政権の中では最も低い水準である。
これに対し、ブッシュ前政権期の削減数は5304発、削減率50%と、かなりの核軍縮が遂行されていた。
こうして見ると、果たしてオバマ大統領は「核なき世界」を目指していたのだろうか、との疑念を抱かざるを得ないのが実情である。
背景には、ロシアによるクリミア侵攻等によって交渉相手のロシアとの関係が悪化したことや、北朝鮮の核保有、さらには中国の南シナ海への戦略核配備といった状況により、米国内でも核削減への反対圧力が強まったことが影響している。
しかしながら、そうした類の事情はブッシュ政権の時にも同様であったわけで、数字を見る限り、共和党のブッシュ政権時代の方が核軍縮に尽力していたと言えるだろう。
2.国家元首による「慰霊」の持つ意味
それでは、「オバマはわざわざ広島まで一体何をしに来たのか」ということになる。
オバマ大統領の広島訪問の真の目的は、核廃絶の訴えでもなければ不戦の誓いでもなく、日米関係の「最終的和解」にあったと考えられる。
そして、この目的は十分達成されたものと見てよい。
オバマ大統領が原爆慰霊碑に献花し、数秒間の黙祷をしたことによって、「最終的和解」は完成したのである。
国家元首が旧敵国の人々の慰霊をすれば、もはや謝罪の言葉など不要になる事については、先例がある。
戦後30年目にあたる昭和50年に昭和天皇が訪米された際にも、昭和天皇に「謝罪」を要求する米国内の世論は強かった。
しかしながら、ワシントンでの晩餐会における昭和天皇の次のお言葉によって、事情は一変した。
「私は多年、貴国訪問を念願にしておりましたが、もしそのことがかなえられた時には、次のことをぜひ貴国民にお伝えしたいと思っておりました。と申しますのは、私が深く悲しみとする、あの不幸な戦争の直後、貴国がわが国の再建のために、温かい好意と援助の手を差し伸べられたことに対し、貴国民に直接感謝の言葉を申し述べることでありました。当時を知らない新しい世代が、今日、日米それぞれの社会において過半数を占めようとしております。しかし、たとえ今後、時代は移り変わろうとも、この貴国民の寛容と善意とは、日本国民の間に、永く語り継がれていくものと信じます」
米国に「謝罪」をするのではなく「感謝」をするという昭和天皇のお言葉に対し、晩餐会の参加者全員がスタンディングオベーションで応え、大きな拍手はいつまでも鳴り止まなかったと言われる。
さらにこの様子が全米に報道されると、米国の世論は昭和天皇に対する賞賛の声に変わっていった。
そして翌日、昭和天皇によってアーリントン国立墓地に眠る無名戦士の墓への供花がされたことにより、完全な「和解」が達成されたと考えてよい。
真の「和解」は、決して「謝罪」によっては生まれない事が示された例である。
米国の大統領が広島で慰霊をする事など、過去にも未来にもあり得ないことを考えれば、2016年5月27日のオバマ大統領の広島における行為と勇気は賞賛に値するし、永久に記憶されるべきであろう。
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《財団概要》
名称:
一般財団法人 人権財団
設立日:
2015年 9月28日
理事長:
牧野 聖修
(まきの せいしゅう)
定款(PDFファイル)
《連絡先》
一般財団法人
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〒100-0014
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